そんな言い訳が、さらにその自分の行動への正当化として機能してゆく。
所詮わたしの悩みなどと言うものは、その後に続く自分を甘やかす行為」への単なる前座みたいなものなのかもしれない。
わたしの今世の目的は、結局はそんなレベルでいいってこと?
その後、ホンジョウはヒカルに対しこれといったクリアなリアクションをしたわけではなかったが、その時点においておそらく・・・彼女が無意識ながらも発したその欲望の種をその瞳の中に察知したにちがいなかった。ホンジョウさん、お久しぶり」
とマキがホンジョウに手を振る。
おお、ワカバヤシさん。
って、えっ?
あれ・・・、それにヒカル?さん・・・ですか?」
え、ええ。
ああ、あの・・・ホンジョウさんに言われて、最近何度かここに」
と言ったヒカルのリアクションは極めて歯切れが悪かった。
するとホンジョウはすかさずヒカルのとなりに座ると、
マスター、ペルノーね。
水割りで」
と言った。
今日はね、みんなでヒカルさんの過去を根掘り葉掘り訊いてたのよ。
ホンジョウさん、残念でした。
惜しい機会を逃しましたね~!」
とマキが余計なことを言っている。
ええ?ま、マジで?
き、聞き逃したの?俺?」
とホンジョウ。
後でゆっくり教えるよ」
とマスターが意地悪そうな笑顔でヒカルの顔色を伺う。
マスター、あの、お会計・・・、お願いします」
とヒカルはいきなり席を立ち、バックの中の財布をゴソゴソとあさり出す
支付寶 香港。
ええ~?
なんで?うそ?そうなの?
ってええと・・・、ちょうど5000円」
と言ったマスターにヒカルはすばやくツリなしの5000円札を手渡し、一心不乱?なんて具合に入り口扉方面へと向かう。
ええ?
あの、も、もう、帰るんですか?」
とホンジョウも席を立ち、ヒカルの背中にそう声を掛ける。
すいません、わたし今日はもう飲み過ぎちゃったみたい」
え~、ヒカルさん・・・、もう少しいればいいのに」
とマキもどうにか引き止めようと試みる。
いえ。
もう本当に、わたし帰らないと」
と言った時のヒカルの表情よりその決心は揺らぎそうにない、とみんなその場の空気から察したようで。
ヒカルさん、今度連絡してもいいですか?
また近々、お会いしたいなあって思って」
とマキはカウンターから腰を上げ、扉の前のヒカルを見送る様に手を振る。