まったくもって商売っけがないって言うか、俺には全然なついてこないんだよ、このオンナ」
とホンジョウはさらにだめ押しでぼやく。
そこまで言われちゃあオマエ、だんどってやるてえのが義理ってもんじゃないの
實德環球?
ホンジョウくん?」
とマスターは早くもそっちの味方かよ?と言った具合だ。
だんどるねえ?」
と言いいながらホンジョウがふと奥のカウンターの席に目をやるとそこには黒ずくめスーツの怪しい中年のオトコが彼に向かって親しげに微笑みかけているのが見えた。
どうも???」
とホンジョウが頭を下げるとそのオトコも軽く会釈をし、グラスを上げて乾杯のポーズを取る。
ああ紹介するよ。
この人、イナガキさんって言って???、今は探偵やってる怪しいオヤジ。
俺が劇団にいた時一緒にやってた仲間」
とマスターはホンジョウとモトコにそのイナガキと言うオトコを紹介する。
た、探偵さん?」
とホンジョウはびっくりしたような表情で、
いやあ、俺初めてですよ。
本物の探偵さんに会うのって」
と言いながらも友人のような気軽さでイナガキに握手を求める。
どうも」
とイナガキも軽く会釈をしつつホンジョウの握手に応じる。
へえ~、あたし一度でいいから探偵ってやってみたかったんですよねえ。
面白そうだなあ?探偵って。
でもやっぱり大変なんですよねえ?探偵さんの仕事って」
と今度はモトコがカウンターに乗り出すようにしてイナガキにそう尋ねる。
いやあ、最近は浮気の調査とかばっかりでね。
まあ、体力さえあれば誰にでも出来ますよ」
とイナガキは半分照れたような笑顔でそう答えると、なんと彼はいきなり、
そうだ、一度やってみますか?
ウチの事務所で」
とお気軽な口調でそうモトコを誘ってくる。
ええ?嘘。
本当ですか?って、いきなりは無理でしょう?
で、でもなんか???、やれるんだったらなんかちょっと楽しそうかも」
とモトコはどうやらマジでその気になっている。
すると今度はホンジョウが何を思ったか、
そうだ、ここで会ったのもなんかの縁って言うでしょう?
ここはひとつ、みなさんで『面白い芝居を演じてみる』ってのはどうでしょう?」
と全員の顔を見回し、得意そうな笑顔でそんな変なことを言い始めた。
と言って俺はボストンでのユリエに関する大まかなストーリー???、そしてその後にウエスティンでモトコが俺に話したSF陰謀論まがいな話、及びその後に俺らがめでたく?とは言い難い形で結ばれるまでのいきさつをなるべくわかり易い表現に変換しつつホンジョウに語って聴かせた。
ただしその時俺は、ユリエとモトコに共通だった例のアンドロギュノス(両性具有)に関する部分とそれゆえの特殊極まりない俺と彼女らとの結合?の部分に関してはあえて話すのを控えることにした。
と言うのも???、その部分だけは相手が親友とは言えさすがの俺も語るに憚ったと言うか、なけなしのプライドに関わったと言うか、ひと言ではうまく説明出来ないのだが、そのこと自体がつまり???あまり笑い話にするようなエピソードではない?なんてまあその時の俺は勝手にそう思っていたからであった
。